倒れざる者~近畿大学創設者 世耕弘一伝・第2部

(15)「不正を働かないから強いのだ」隠退蔵物資の摘発で貫いた清廉

 弘一は後にこう訴えた。

 「私が一文でも貰(もら)っていたらこの仕事はやれぬ。これを強引にやれるのは、私の口から申上げるのはどうかと思うが、私が不正を働かないから強いので、ほかに強いことがあるわけではない」

 ある友人が隠退蔵物資をめぐる頼み事で弘一の自宅を訪ねたことがあった。

 「それだけは関係なさるな」

 弘一はきっぱりと断ったが、台所では妻の紀久子が七輪をうちわであおいでいた。この友人は、質素な暮らしに弘一の清廉な仕事を見た思いがした。(松岡達郎)=敬称略

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