トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による2度目の米朝首脳会談は、北朝鮮が約束した「完全非核化」の取り組みが本物かどうかが明白となる場である。
北朝鮮が核物質、核兵器、関連施設の全てを申告し、米国や国際機関による検証を受け入れる。いつまでに廃棄するか行程表を早急に作る。非核化への具体的行動を金氏は示さなくてはならない。
昨年6月の初会談は米朝の緊張緩和をアピールした。だが、「政治ショー」はもはや不要だ。その後、非核化で何ら進展のない事実を直視すべきである。
金氏から納得できる言質を得て停滞を打破する。そうでなければ交渉全体を失敗と認める覚悟がトランプ氏には必要だ。
北朝鮮は、米国による「相応の措置」を求めている。制裁緩和などの見返りを要求するものだが安易に取引に乗ってはなるまい。
トランプ政権が対北交渉で、歴代米政権の「過ちを繰り返さない」と強調してきたことを思い起こしてほしい。
北朝鮮は1994年の枠組み合意で重油や食糧を手にし、2005年の6カ国協議共同声明後には、米国の金融制裁の緩和やテロ支援国家指定の解除をもぎとった。その裏で核凍結や廃棄の約束を平然と破り、開発を進めた。
歴代米政権の二の舞いを演じたくないというなら、いまがトランプ氏の正念場だ。対北制裁の厳格履行を中心とする圧力路線を最後まで貫くべきである。
韓国の文在寅大統領は、開城工業団地など南北経済協力事業の再開に意欲を示し、トランプ氏に「『相応の措置』に韓国の役割を活用してほしい」と伝えた。
経済協力の再開は南北首脳の合意事項だが、国連制裁の緩和が前提である。非核化なしの協力などもってのほかだ。南北の融和ありきの合意を非核化交渉に織り込もうとすること自体がおかしい。
トランプ氏は北朝鮮の非核化を「急がない」とも述べている。核実験、ミサイル発射が停止しているのは事実だが、その間にも核・ミサイルの開発、生産が進んでいる。脅威は減じていないのだ。
北朝鮮の生物・化学兵器も取り除かなければならない。日本人拉致被害者の全員帰国は喫緊の課題である。トランプ氏には急いでもらわなくてはならない。