河村直哉の時事論

なぜ自力で拉致問題を解決できないのか  編集委員兼論説委員 河村直哉

 2回目の米朝首脳会談が開かれる。核、ミサイルをめぐる問題で双方がなにがしか歩み寄りを見せる可能性が高い。日本としては北朝鮮の非核化とともに、拉致問題の解決という重要課題がある。安倍晋三首相はトランプ米大統領と電話会談し、拉致問題解決への協力を求めた。

 もっともである。しかしこういう問いがどうしても残ってしまう。すなわち、日本はなぜ拉致問題を自力で解決できないのか、と。

原則的な問い

 政府が非核化とともに、あらゆる機会を生かして拉致問題の解決を目指すべきなのはいうまでもない。外国のチャンネル、国際世論など、使えるものは総動員して被害者の帰国を実現しなければならない。

 しかし一方で先の原則的な問いは残ってしまうのである。繰り返すが、日本はなぜ拉致問題を自力で解決できないのか。

 拉致被害者家族会と支援組織の「救う会」は、金(キム)正(ジョン)恩(ウン)朝鮮労働党委員長に向けたメッセージを発表した。被害者が帰国しても秘密を聞き出し国交正常化に反対する意思はないとし、「拉致被害者と静かな日常生活を送ることを切望しています」と語っている。

 どんな思いでメッセージを発表したのだろうと思う。肉親をさらった北朝鮮の非道をだれよりも憤っているのは、家族であろう。取り戻すための訴えを長い年月、続けてもきた。北朝鮮が謝罪とともに一日も早く解放するのが当然である。それでも抑えてこう呼びかけざるをえない。全ての国民が家族のこの思いをくみ取りたい。

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