浪速風

司馬さんに舌を巻かせたドナルド・キーンさん

日本文学研究者のドナルド・キーンさん=東京・西ケ原の自宅で(酒巻俊介撮影)
日本文学研究者のドナルド・キーンさん=東京・西ケ原の自宅で(酒巻俊介撮影)

大阪が生んだ世界的町人学者を記念して、海外の日本研究者を顕彰する山片蟠桃(やまがた・ばんとう)賞の第1回受賞者はドナルド・キーンさんだった。賞の創設に尽力した司馬遼太郎さんは、授賞式で「府民の一人として肩身が広く、賞の価値が一段と重くなったような思いがします」とあいさつした。

▶2人の交流は長い。船場の料亭で対談の後、御堂筋まで歩きながらキーンさんが「この辺に芭蕉が死んだ場所があるはずですね」と問いかけた。石碑があるのは知っていたが、どこかわからずにいると、キーンさんが側道の植え込みに入り「ここにありました」。造詣に舌を巻き、司馬さんは芭蕉がキーンさんを呼んだと感じた。

▶先の大戦で海軍の情報将校だったキーンさんは、大義のためにあらゆる苦難に耐える日本兵に「日本人こそ勝利に値するのではないか」と思ったという。そして、戦後は日本文化の研究に打ち込んだ。かけがえのない友人・恩人を得た日本人は幸せである。