金正恩氏が専用列車を選んだわけ…

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮・平壌から中国を経てベトナムに入る鉄道ルートは約4千キロに及び、空路なら約3時間半で済むところを、2日半前後かかるとされる。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がベトナムまで専用列車を走らせるという多大な労力を費やす選択をした裏には、国民に向けたメッセージとともに、会談相手であるトランプ米大統領を強く牽制(けんせい)する意図が込められているようだ。

 金正恩氏の祖父、金日成(イルソン)主席は1958年のベトナム訪問で中国南部の広州まで列車で移動した後、空路でハノイ入りした経緯がある。金正恩氏は、カリスマ性の強かった祖父の服装や行動をまね、権威付けを図ってきた。今回も祖父の訪越とルートを重ねることで、米朝会談に一層重みを持たせる狙いとみられる。

 金正恩氏は昨年4月に核開発との「並進路線」から経済建設に総力を集中させる新たな路線を打ち出した。鉄道でベトナムに向かう際に経由する広州など中国共産党独裁下で経済発展を遂げた都市を走ることで、経済再建に突き進む姿とともに、北朝鮮の地方都市も広州のように発展できるとのメッセージを国民に示す思惑もうかがえる。

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