安倍晋三首相は20日、トランプ米大統領と電話会談を行い、改めて日本人拉致問題解決への協力を要請した。
27、28日にハノイで金正恩朝鮮労働党委員長と再会談を行うトランプ氏は、「拉致問題を重視する」と述べ、金正恩氏へ日本側の意向を伝達することを約束した。
約30分間行われた電話会談で安倍首相は「特に拉致問題は、トランプ氏と、より時間をかけてしっかりと話をした」と述べ、「私がいかに拉致問題を重視しているか『自分もよく理解できた。だから自分も拉致問題を重視する』と明確に述べてもらった」と会談の様子を明かした。
安倍首相は19日に拉致被害者家族と面会しており、「いかにご家族が再会、帰国を希望しているかという気持ちを含め、トランプ氏に話した」のだという。
トランプ氏は2017年の国連総会で、横田めぐみさんを念頭に「日本人の13歳の少女が拉致されスパイの養成に利用された」と演説し、昨年の米朝首脳会談でも拉致問題に言及した。
再会談では拉致の早期解決を強く迫り、日朝首脳会談の実現につなげてほしい。
金正恩氏に直接伝達してもらいたいのは、かねて安倍首相が述べてきた「拉致問題の解決なしに北朝鮮は未来を描けない」ということに尽きる。具体的には、拉致被害者全員の帰国なしに日本は動かない、ということだ。
昨年の米朝会談後、トランプ氏は北朝鮮の非核化費用について、「日韓に支援する用意がある」と述べた。だがこれも、前提は拉致問題の解決である。
懸念されるのは、トランプ氏が北朝鮮の非核化について「急がない」と述べていることだ。米側は北朝鮮に全ての核・ミサイル戦力や核施設リストの申告を求めてきたが、これに至らぬまま制裁を緩めるようなことがあれば、北朝鮮の思惑通りではないか。
ただでさえ中国、ロシアに加えて韓国までが制裁の緩和、骨抜きを求めている。国際社会の制裁の環(わ)にほころびが生じれば、真の非核化が進まない上に、拉致の解決も遠のいてしまう。
しかも拉致問題の解決は、急がなくてはならない。被害者も、帰国を待ち続ける家族も高齢化し、疲弊も進んでいる。この機を逃すわけにはいかない。