下着大手のワコールは22年、「CuCute(キュキュート)」と名付けたブラを発売。「豊かなバストをコンパクトに見せる」とうたう。27年にはセシールが「さらしみたいなブラ」を出し、「さらしを巻いたようにしっかりボリュームダウンできる」とした。ともに一般的なブラと違い、胸に2つの山を作らず、胸を平たくし、高さやボリュームを抑えるのが特徴だ。
どちらも売り上げは堅調で、「今後さらに伸びるとみている」(ワコール広報・宣伝部)。セシールは4月に「さらしみたいなブラ」の種類を増やす。
◆「SNSの力」
西武池袋本店(東京)でも、昨年12月から大きな胸の人のための洋服を置き始めた。平成も終わりを迎える今、なぜ女性の胸の悩みが明らかになってきたのか。
オーバーEの和田さんは「SNSの力が大きい」と話す。「今までずっと悩みを言えなかったという人たちが、SNSで悩みを明かし、ツイッターで広げてくれた」。昨年2月、同じ悩みを持つ女性がツイッターにオーバーEのシャツとの出合いを描いたマンガを投稿すると、2万5千回リツイートされ、3万6千件の「いいね」がつき、「overE民」との言葉をつぶやく人も出てきた。「巨乳、爆乳と、胸の大きい女性を指す既存の言葉は嫌なイメージがつきまとう。オーバーEが、それらに代わる呼び名になれれば」と和田さんは話している。
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■モダンな服を格好良く着るため
胸をコンパクトに見せるブラの台頭はファッションの潮流変化を受けたものと指摘するのは、ファッション誌「Numero TOKYO(ヌメロ トウキョウ)」の田中杏子(あこ)編集長だ。
1990年代後半以降、ステラ・マッカートニーさんやフィービー・ファイロさんといった女性デザイナーが活躍。「こうした女性デザイナーによるモダンなデザインの洋服は、胸をミニマイズ(小さく)したほうが格好良く着られるのです」と田中編集長。ちなみに「寄せて上げる」ブラが全盛の頃は、男性デザイナーが活躍し、まだボディコンが流行していた。