国際情勢分析

「自立」してほしいアジアの結核対策 カギは日本の成功例

「感染症対策に割ける予算は限られている」と話すインドネシアのモレック保健相=昨年11月(大瀬二郎撮影/グローバルファンド提供)
「感染症対策に割ける予算は限られている」と話すインドネシアのモレック保健相=昨年11月(大瀬二郎撮影/グローバルファンド提供)

 結核などの感染症対策の予算を海外からの援助に頼るアジアの国々に対して「自助努力」を求める声が上がっている。経済成長著しいインドやインドネシアが資金援助を求めることへのいらだちに加え、かつての日本のように先進国に仲間入りする前の段階で結核の封じ込めに成功した例があるからで、当事国の意識改革が求められている。

 「政府が最優先するのは経済成長のためのインフラ整備。感染症対策に割ける予算は限られているのです」。インドネシアのモレック保健相は昨年11月、日本人記者団の取材に、結核対策が遅れる自国の懐事情を嘆いてみせた。

 インドネシアの2017年の結核患者数は44万6732人。インド、中国に次ぐ世界ワースト3の深刻さだ。モレック氏は「結核を終息させるには資金援助の継続が必要だ」と訴える。

■「援助される側」から「する側」に

 ただ、援助側の国や国際機関では「そろそろ自立して」との声が上がる。

 インドネシアは近年5%前後の経済成長を続けている。首都ジャカルタのビジネス街には東京や米ニューヨークの街並みを想起させる高層ビルが建ち並び、人や車が活発に行き交う。主要20カ国・地域(G20)のメンバーでもある。

 援助を続けてきた国際機関「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド=GF)」(本部ジュネーブ)の國井修・戦略投資効果局長は「東南アジアの地域大国として『援助される側』から『援助する側』に移行する段階に来ている」と述べた。

 同様の指摘は、急速な経済成長を遂げながらもいまだ世界の4分の1以上の結核患者を抱えるインドや、軍拡を続ける一方で2016年までGFの資金援助を受けていた中国にも当てはまる。

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