主張

加速器の誘致 日本の未来見据え判断を

 宇宙と物質の成り立ちに迫る次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致をめぐる政治判断が、大詰めを迎えている。

 ILC計画を推進する世界の物理学者らの国際組織は、日本政府に3月7日までに態度を表明することを求めている。

 ILCは日米欧など約50カ国の物理学者らが、国際協力により日本の北上山地への建設を目指している直線型の巨大加速器である。建設費は約8千億円とされ、立地国の負担は全体の5~6割と見込まれる。

 ILC誘致に前向きの姿勢を示すのか、それとも見送るのか。政府の判断は科学分野の国際貢献にとどまらず、安全保障やグローバル化など日本のありようにも多角的にかかわる問題である。

 日本の未来を見据え、国づくりの視点で議論し、国内誘致の是非を判断しなければならない。

 ILCについて日本学術会議は昨年12月、「誘致を支持するには至らない」との見解を示した。想定される科学的成果が、巨額の費用負担に十分に見合うという認識には達しなかったとしている。

 日本の科学力はこの10年で急激に低落した。原因の一つとして、費用対効果が過度に重視されたことが挙げられる。学術会議の見解には、日本の科学界の萎縮した状況が反映されている。

 研究者が多様な考えを持ち、困難な課題に挑むことで科学は進歩していく。「課題が多い」「科学界の合意が前提だ」といった慎重論に安易にくみすると、科学の進歩を止めることになる。

 10年間で数千億円の費用負担は決して軽くない。学術会議の見解や慎重論も踏まえなければならないが、科学研究予算の枠にとらわれず、広い視野でILC誘致の意義を議論する必要がある。

 ILC計画には欧州、米国、ロシアのほか中国、韓国、インドなどの参加が見込まれる。欧州合同原子核研究所の円形加速器「LHC」や、国際宇宙ステーション(ISS)よりも広範な国際協力プロジェクトになる。

 国家間の対立を超え、人類の知の地平を拓(ひら)くために、世界が一つになる可能性がある。

 ILC誘致は、日本がその舞台となり、中心的な役割を果たしていくことを意味する。その意義を議論したうえで、政府としての判断を下すべきである。

会員限定記事会員サービス詳細