映画で主人公を演じた女優ヴィヴィアン・リーの美貌とともに、失われゆく米南部上流社会への愛惜に満ちた壮大な恋愛小説というイメージが強い『風と共に去りぬ』。新訳を手がけた翻訳家が、その大衆的な装いとは裏腹な、矛盾と葛藤に満ちた作品世界を解明した刺激的な書。
スカーレット・オハラは美人とは書かれておらず、ヒロインなのに一貫して話の部外者であるという。真のヒロインは誰なのか。登場人物の間に巡らされた分身的な関係とは。作者マーガレット・ミッチェル自身の発言や生い立ちなどを手がかりに、新たな読みを示す。(鴻巣友季子著/新潮選書・1300円+税)