主張

「南北」とIOC 政治宣伝に手を貸すのか

 純粋なスポーツのシーンとして歓迎することなど到底できない。

 韓国と北朝鮮が国際オリンピック委員会(IOC)との間で話を進める2020年東京五輪での南北合同チームの結成である。

 15日にスイス・ローザンヌで行われた南北とIOCの3者会談では、開会式での合同入場行進とバスケットボール女子、ホッケー女子、柔道、ボートの4競技での合同チーム結成に合意した。しかも、南北共催での32年夏季五輪招致の申し入れに、IOCのバッハ会長は歓迎の意向を示した。

 昨年の平昌五輪やジャカルタ・アジア大会などでも認められた合同チームが何を残したか、IOCは考えてほしい。合同行進では南北が「独島」と呼ぶ竹島入りの統一旗を掲げようとするなど、結局、政治宣伝の道具としてスポーツを弄んだだけではないか。

 一方の当事者である北朝鮮は、国連の制裁下にありながら非核化の約束をいまだ履行していない。横田めぐみさんら罪のない同胞を拉致し、返そうとしない犯罪国家だ。国際社会を危険にさらすこれらの問題に解決の兆しすら見えない中での友好ムードの醸成は、制裁にあえぐ金正恩体制を利するだけだ。

 昨年5月の卓球世界選手権の団体女子では、準々決勝の南北対決を前に急遽(きゅうきょ)、合同チーム結成を表明し、試合を経ずに準決勝に進んだ。ルール無視と自己都合による場当たり的な合同チーム結成は、真剣勝負の場に無用の混乱を引き起こした。

 北朝鮮にとっては、スポーツの中でもとりわけ世界的なイベントである五輪が最も利用しやすいのだろう。スポーツが低く見られているのは明らかだ。

 それに手を貸す韓国は論外で、安易に前傾姿勢を示すIOCのバッハ会長も五輪の政治利用に加担していることを自覚すべきだ。

 32年五輪の「共催」も絵空事というほかない。北朝鮮の反ドーピング機関は3者会談の直前に国際基準を満たしていないとして、世界反ドーピング機関(WADA)から「不適格組織」の認定を受けた。現時点で国際大会を開く資格すらないのだ。

 現実を踏まえぬ共催は、スポーツに名を借りた政治ショーでしかない。IOCは頭を冷やして国際情勢を眺めてはどうか。

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