両隣にそびえる高さ40メートル以上の原子炉建屋は圧迫感がある。3号機の建屋は特に水素爆発や津波による破損がひどく、むき出しになった壁の鉄材などが今も生々しさを残している。
通路の中央にいた広報担当者の空間線量計は毎時250マイクロシーベルト。ところが3号機側に数メートル近寄っただけで数値はみるみる上昇し、350マイクロシーベルトに達した。1マイクロシーベルト以下だった正門付近の数百倍だ。ちなみに取材者に設定された1日当たりの上限被曝量は100マイクロシーベルトで、単純計算すると15分余りの滞在で上限に到達することになる。この場は促されて5分程度で立ち去ることに。
広報担当者は、装備の規制が緩和されたメリットとして、通路を通る作業員がいちいち重い装備を装着する必要がなくなり、「作業員の体の負担が減った」と説明した。
原子炉内部は「何も変わらず」
当初のころと比べれば作業環境が整ってきているのは確かで、今後、廃炉は原子炉建屋内での枢要の作業が中心になっていく。
ただ、その手始めとなる原子炉建屋からの使用済み燃料取り出し作業は相次ぐトラブルで足踏み中だ。既に終了した4号機を除く3基で作業が行われるが、うち先陣を切る3号機は30年度半ばの予定だった作業開始が「3月末めど」に延期された。
今回は廃炉作業の目に見える進展や変化を取材するつもりだった。だが、いまだ原子炉建屋近くの高い線量を目の当たりにし、8年たっても原子炉内部という目に見えない部分は何も変わっていないという「現実」を突きつけられた。