【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は昨年2月に韓国で開かれた平昌五輪を政治的に利用しようとする思惑を隠そうともしなかった。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が北朝鮮擁護に傾く中、2020年の東京五輪でも、北朝鮮が「南北統一」ムードをあおって韓国の取り込みを強めるため、日本との領土・歴史問題を持ち出す恐れは拭えない。五輪の政治利用を許さない日本の毅然とした措置が求められている。
日本政府は昨年11月、オリンピック関連の会合に出席する北朝鮮の金日国(キム・イルグク)体育相の入国を許可した。独自制裁で北朝鮮国籍保有者の入国を原則禁じているが、「特例」として認めた。
北朝鮮は平昌五輪の開会式や閉会式に合わせて国際社会が渡航禁止の制裁対象とする高官を次々訪韓させ、韓国が対話を受け入れるかを試す踏み絵とした。安倍晋三首相が拉致問題解決に向け、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との直接対話を探る中、北朝鮮が日本にも政治的判断が必要な選択肢を突き付け、揺さぶりを掛ける事態も想定される。