大日本住友、iPS細胞から臓器作製 実用化目指す

大日本住友製薬の野村博社長=12日、大阪市中央区(前川純一郎撮影)
大日本住友製薬の野村博社長=12日、大阪市中央区(前川純一郎撮影)

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の再生・細胞医薬品の開発を進める大日本住友製薬が、将来的に、患者本人の細胞(自家細胞)に由来するiPS細胞を使って組織や臓器を作製し、患者に移植する治療の実用化を目指していることが12日、分かった。従来の治療薬が効かない疾患の治療に結びつく可能性がある。

 自家細胞を元に培養したiPS細胞は、移植の拒絶反応が起きにくいメリットがあるが、現在は作製に莫大な時間や費用がかかる。このため研究機関などでは、より短期間・低コストで自家iPS細胞を提供するための技術開発が進んでいる。大日本住友はこうした技術の進歩を見据え、自家iPS細胞を使って患者ごとに必要な臓器を作製する再生医療を実用化したい考えだ。

 大日本住友の野村博社長は産経新聞の取材に対し、再生医療の将来について「患者に合った臓器を作るなどの個別化医療が進むだろう」と指摘。「研究機関の先進的技術の実用化に私たちの技術を生かしたい」と話した。

 同社はiPS細胞の大量製造技術に強みを持ち、再生・細胞医薬品を積極的に開発してきた。現在は、目の病気の一種である加齢黄斑変性を治療する再生・細胞医薬品の開発に、理化学研究所とバイオベンチャー「ヘリオス」(東京都港区)とともに取り組み、2022年度の実用化を目指している。また、パーキンソン病や脊髄損傷の再生・細胞医薬品も各研究機関と連携して準備している。

 野村氏は「今後も、従来の薬が効かない疾患に対してiPS細胞由来の再生・細胞医薬品の開発を拡大する」と意欲を示した。

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