浪速風

駐日ロシア大使 抑留者の文章をどう読んだか

詩人の石原吉郎は大戦後、ソ連に8年抑留された。極限生活を経たその言葉は胸を突く。「ここにおれがいることを、日に一度、かならず思い出してくれ」。刑務所に収容されたときの心の叫びをそうつづった。祖国から忘れられることは、恐怖にほかならなかった(「望郷と海」)。

▶救いがないまま非人間的な抑留生活を過ごすうち、望郷は次第に「忘郷」へと変わったという。大戦末期に日ソ中立条約を一方的に破り、60万人ともいわれる日本人を抑留したソ連は非道の一言に尽きる。日本がポツダム宣言を受諾した後に占領した北方領土についても同じだ。

▶島たちも「かならず思い出してくれ」と叫んでいるのではないか。父祖の地である。四島返還の原則を日本は曲げてはいけない。「(占領は)スターリンの指令による国家犯罪」とする本紙論説顧問に駐日ロシア大使がかみついた。歴史教科書を読むようすすめた大使は、抑留者の文章をどう読んだか。