追悼

作曲家 ミシェル・ルグランさん 豊富な音の語彙力発揮 音楽プロデューサー・濱田高志

 ミシェル・ルグランと出会ったのは、東京公演で彼が来日した時でした。僕が作った、彼の無名曲まで網羅した作品リストを喜び、「連絡を取り合おう」と言ってくれた。以降、彼の自伝の監修を任されたり、本人公認の本を出版したり。来日時の取材にもずいぶん立ち会いました。

 取材では、やはり彼が音楽を担当した映画「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ監督)に関する質問が多かった。パリ国立高等音楽院で学んだミシェルは記録映画「アメリカの裏窓」でジャズやクラシックなどあらゆるジャンルを生かし、音楽の語彙力の豊かさを発揮。感銘を受けたジャックから長編第1作「ローラ」の音楽を依頼されたのです。

 試写を見て「音楽をつけたくなった。この男のために頑張ろうと思った」と語っていました。その後、「シェルブールの雨傘」のテーマ曲では哀愁ただよう旋律で真骨頂を発揮。ジャックが勝手に歌声を目立たせるよう調整してミシェルを激怒させたこともあったそうです。最終的に歌と演奏の両方がよく聞こえるように整えた、と聞きました。

 一度「どの曲が一番好き?」と聞いたことがあります。「髪の毛くらい多いものの中から好きなものを選べるかい?」と言いながらも「一番有名だと思うのは『シェルブール-』。ジャックとの思い出の結晶でもある」と答えていました。

 最後に会ったのは、去年7月の彼の来日公演の時。その3週間ほど前まで体調を崩し、意識がない状態で入院していたのですが、それでも、来日公演のピアノの前ではしゃんとしていた。「僕は音楽がなければ、生きていけないようだ」と語っていました。

 彼のような巨匠はもう出てこないとは思いますが、その遺伝子や精神は各国のミュージシャンの中に息づいている。彼の音楽を聴けば、そばにいるように感じられると思います。(談)

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