韓国の盧泰愚(ノ・テウ)元大統領(在任1988~93年)は軍人出身だったが、民主化時代がスタートした最初の政権で「普通の人の時代」を政権のキャッチフレーズにした。ソウル五輪を成功させ、左翼思想や労働運動の解禁、共産圏諸国との国交樹立など、難しい過渡期を大きな混乱なく乗り切った業績は高く評価される。
ところがその任期中に大統領の娘が大財閥(SKグループ)の御曹司と結婚している。米国留学中に知り合った仲で結婚にことさら政治的背景はなかったようだが、これには驚いた。
「普通の人の時代」を看板にした政権下でこれはまずい。政権のイメージダウンではないか。結婚するとしても父親の退任後にすべきではないかとこのコラムで書いたのだが、当時の韓国マスコミでそれを指摘したところはどこもなかった。政権に遠慮したのだ。
最近、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の娘一家が昨年、タイに移住していたことが分かり話題になっている。報道によると夫の事業失敗などが背景にあるようだが、大統領府はプライバシーを理由に口を閉ざしている。しかし父が大統領をしている祖国を離れ海外移住というのだから国民が「なぜ?」と思うのは当然だろう。娘は日本留学の経験もあり国際派のようだ。国民にちゃんと説明しないと彼女も傷つくのではないか。(黒田勝弘)