「多孔性材料」の極小の穴に開閉機能 京大グループ開発

 極小の穴(細孔)を無数に持つ「多孔性材料」に、温度変化で開閉する扉のような役割を持つ分子を組み込み、効率的に特定のガス分子を分離したり貯蔵したりできる新たな物質を開発したと、京都大の北川進特別教授(錯体化学)らのグループが24日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。環境問題の解決や、青果の熟成時期の調整などへの応用が期待される。

 多孔性材料は、細孔にガスを吸着させることが可能な物質で、身近なものでは活性炭やゼオライトなどが知られている。

 北川特別教授らはこれまでに、金属イオンと有機物を合成した多孔性材料「多孔性金属錯体」を開発。だが、強固な構造のため、ガス分子の流量をうまく制御できないことなどの課題があった。

 研究グループによると、今回、多孔性金属錯体の細孔間に、開閉可能な扉のような役割を担う分子を組み込むことに成功した。

 この分子は温度変化によって0.3~0.5ナノメートル(ナノは10億分の1)の開閉幅を調整できる。ガス分子の分離には冷却や加熱など大きなエネルギーが必要だが、今回開発した物質で細孔間の開閉幅を調整し、細孔を通過するガス分子を選別することで、容易に分離することが可能になったという。

 また、開閉のコントロールでガス分子を細孔内に貯蔵し、徐々に放出させることにも成功。これにより、例えば青果の熟成を促すエチレンを貯蔵後、青果を入れた密閉容器の中で放出して熟成を管理するといったこともできるようになるという。

 グループのメンバーで東京大大学院の細野暢彦講師は「ガス分子の流れをコントロールできたことで、省エネや効率的なガス分離に波及効果が望める」としている。

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