また首相には、拉致問題をはじめとする北朝鮮との諸交渉を進展させるためにも、北朝鮮に強い影響力を持つロシアを日本側に引き寄せたいとの狙いもある。
もともと「力の信奉者」であるロシアも、大統領支持率を犠牲にしてまで日本に島々を返す交渉を重ねることはもうあり得まい。
韓国と北朝鮮の一体化が進み、朝鮮半島が流動化している現在だからこそ、新たな国際秩序の形成に日本が自ら関与し、牽引(けんいん)していく必要がある。その柱の一つが、日露関係の強化だといえる。
ただ、相手がある交渉事では、結果を急いだ側が足元を見られ、妥協を迫られることが多い。それは首相自身が一番、熟知しているはずだ。容易ではないが、首相には焦らず、腰を据えて実が取れる交渉を望みたい。(阿比留瑠比)