2次元バーコード「QRコード」を使ったスマートフォン決済に参入企業が相次ぐなか、支払いに現金を使わないキャッシュレス化普及の大きな目的とされるインバウンド(訪日外国人)の利便性向上に本当に役立つのか疑問の声が上がっている。中国以外の国ではクレジットカードや銀行口座から即時に引き落とされるデビットカードが主流のため、国内でQRコードの受け皿を広げても使ってもらえるか分からないためだ。官民挙げた「QR狂想曲」はどこへ向かうのか。
■米では1%以下?
「QRコード決済を利用している人は街中で見かけない。地下鉄を除けば非接触決済自体ほとんど利用されておらず、利用率は1%以下という統計もある」
大手クレジットカード会社の米国駐在員はこう漏らす。英国やフランスといった欧州や、キャッシュレス化が急速に進む韓国なども状況は同じで、QR決済は中国人観光客が中国電子商取引(EC)大手アリババグループの電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」や、騰訊(テンセント)系の「微信支付(ウィーチャット・ペイ)」を利用している程度だという。
確かに、日本クレジット協会の集計では、民間の消費支出に占めるキャッシュレス決済の割合ではクレジットカードとデビットカードが圧倒的に多い。韓国ではこの2種類で95・9%を占めており、英国は68・5%、米国でも46%に上る。
アリペイが爆発的に普及した中国では、個人の信用力を重視するクレジットカードや銀行口座の普及が遅れた背景があり、世界的にみれば特殊な立ち位置だ。
今年秋のラグビーワールドカップや2020年東京五輪・パラリンピックで見込まれる外国人観光客の増加を取り込もうと、官民の環境整備は進む。消費税増税対策の目玉で導入されるキャッシュレス決済のポイント還元に加え、福岡市が公共施設や商店街、タクシーでもQR決済を使える実証実験を行うなど、地方自治体の取り組みも盛んだ。
ただ、爆買いの沈静化で中国人観光客のみにターゲットを絞った対応は効果が薄れており、「ワールドカップに合わせて海外のラグビーファンの消費を促すなら、むしろ英国連邦のアングロサクソン系を重視すべきではないか」との指摘もある。外国人観光客の利便性を重視するならQRにこだわらない対策が必要だ。
■国内では続々参入
一方、国内企業は既にQR決済を次世代の主役とみて群雄割拠の状況。クレジットカードや交通系電子マネーと異なり加盟店側の初期費用がほとんどかからないため導入しやすく、急速な普及が見込めるためだ。