安倍晋三首相は21日、ロシアを訪問し、22日午後(日本時間同夜)にプーチン露大統領と通算25回目の会談に臨む。両首脳は6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせ、平和条約の締結で大枠合意を目指すが、北方領土の主権をめぐる歴史認識など見解は対立したままだ。20日にモスクワで北方領土返還に反対する抗議集会が行われるなど、問題解決に向けた環境整備は容易ではない。戦後70年以上、解決できなかった北方領土問題に両首脳が「必ず終止符を打つ」(安倍首相)ことができるか。6月に向け交渉は大詰めを迎える。
国の根幹である領土問題を決着するのは日露双方にとってハードルが高い。
ロシアは第二次世界大戦の結果、北方領土はロシア領となったと主張するが、旧ソ連は第二次大戦末期に日ソ中立条約を一方的に破って参戦し、その後、北方四島は不法占拠された。この歴史的事実を曲げるロシアの主張を受け入れれば、国際社会で「法の支配」を重視してきた日本の信頼は失墜する。尖閣諸島(沖縄県石垣市)を自国の領土と主張する中国を利することにもなる。
一方、ロシアにとっては、北方領土を日本に返還すれば「事実上、ロシアの領土が減る」(外交筋)ことになる。ウクライナ南部クリミア併合など、大国意識むき出しで強硬姿勢を貫き、求心力を維持するプーチン氏にとって領土問題での譲歩は政治的リスクだ。