芥川賞「受賞2作はほぼ同点」 奥泉光選考委員が講評

「あとは、時代の先端をいくアイテムが出てくる割には、小説自体としては古めかしいのでは、という意見もありましたし、女性の語りというスタイルに見合うだけのリアリティーが小説に感じられないという意見もありました。私としては、主人公が母の遺骨を神社に捨てにいくシーンや、歩道橋の上で高架に触れるシーンなどの細部に魅力があると感じたのですが、もっとそういうシーンがほしかった、そのシーンが目立つのはむしろ他のシーンがもう一つだからではないか、という厳しい意見も出ました」

「砂川文次さん(28)の「戦場のレビヤタン」(文学界12月号)。傭兵の話なのですが、いろいろな細部が描かれている。しかし驚くような新鮮さが欠けているのではないか、という厳しい意見が出ました。戦場で主人公が生と死について思弁するわけですが、これは小説の世界で何度も描かれてきたテーマでもある。そこで描かれたものに、もう一つ新鮮さがなく、文学的な臭みの中で描かれていた」

--高山作品について

「たいへんよい雰囲気を作っている、という評価は委員全員にありました。わずかずつ世界を現実からずらして、異化する技術は総じて評価が高かった。ただ、その作り方がどこか思わせぶりに思われても仕方ない、という声がありました。ファンタジーとして読んだとき、作家が中心となる主題から横へ逃げていく。うまいとも言えるが、物足りなさ、わざとらしさを感じさせるという意見もありました。どこかでもう少し、この世界を掘り下げることがあってもよかった」