「宝島」で直木賞を受賞した真藤順丈さんは、黒色のスポーツジャケットに白いハットをかぶって会見に臨んだ。
--いまの気持ちは
「ノミネートが発表されてからずっとドラムロールを聞かされているようだった。きょうはひときわ、うるさかった。ホッとした。あぁよかった、と。編集者の期待に応えられた喜びがあった」
--山田風太郎賞とのダブル受賞についての感想を
「(直木賞は)どっちでもいいや、オレには風太郎がついているという気持ちがあったが、(発表が)近づいてくるうちに、ダメよりはいいほうがいいな、と。『宝島』は多くの人に読んでもらいたい。受賞でそういう機会が増えると思うので、うれしい」
--『突き抜けた明るさがある』と林真理子選考委員の評価があった。過酷な物語だが、書きながら意識したか
「語りが重要。だれか特定の人間が務めているわけではなく、土地の声みたいな感じ。語りが茶々や合いの手を入れるところに、自分も救われた。つらい部分を語りに助けてもらった。その文体を獲得できていなかったら、多くの人に読んでもらえなかった。沖縄の歴史、重い戦後史を扱っているが、表現したいのは市井の人の息吹、たくましさ、明るさ、ユーモアを小説のなかに織り込んでいきたかった。おのずと出てきた」