「歌舞伎見ながら、電話来ねえなと…」芥川賞・上田岳弘さん

「単純に仮想通貨は『価値がある』として分散処理をして、取引台帳だけで『存在するよ』と皆が言っていくだけで価値があるとされる。小説も文字しかなく、Kindle(電子書籍)であっても紙の本であっても、物体があるわけではない。きちんと意味として読み取れないと存在しない。書いてあるだけなのに存在する、何か世の中に影響を与えるという意味では(仮想通貨と小説は)似てるかなと」

--選考委員の講評で「人間の営みが終わってしまうかもしれない、そのことへの愛惜感がある」と評価があった。人間的な営みが後退、縮小していく中で、それでも小説を書く意味とは

「小説に限らず、芸術一般というか、『これって意味があるの』という行為を続けていることで人間は存在を担保されているのかなという気がしている。価値があるかどうかわからないものに賭けてやっていくという、効率では換算できない、そういうものが人間存在の根本にあって。『面白いかどうかわからないけれど、こういうものを書いて見ました』ということを続けていることが大事」