浪速風

稀勢の里の引き際 天命を終えた「ホッチャレ」のよう

北海道に「ホッチャレ」という言葉がある。先輩コラムニストの石井英夫さんは、平成15年の初場所中に引退した横綱貴乃花をこう書いた。「天命というべき産卵を終えたサケたちはぼろぼろのホッチャレとなって力尽き、静かに川面にその身を横たえる。しかしそれは決してぶざまなのではない」(「産経抄」から)

▶横綱稀勢の里がついに引退を表明した。横綱として8連敗で貴乃花を抜くワースト記録になったのが決断させたようだが、引退までの経緯もよく似ている。貴乃花は右膝の大けがを押して優勝決定戦の土俵に上がり、時の小泉純一郎首相に「感動した!」と言わせたが、以降は休場が続いた。

▶稀勢の里も29年春場所で、左肩を負傷しながら優勝決定戦で2場所連続優勝を飾ったが、それが相撲人生を縮めることになった。心身ともぼろぼろの「ホッチャレ」だろう。19年ぶりに誕生した日本出身横綱として、期待と重圧に耐えた姿に拍手を送りたい。