いわゆる徴用工問題をめぐる韓国最高裁の判決や、韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射で、日韓関係はこれまでになく悪化している。にもかかわらず、韓国国内では日本での就職を希望する若者が後を絶たない。背景には韓国国内の就職難、そして人手不足に悩む日本企業の事情がある。
■韓国に出向き採用面接
韓国・ソウルでの日本企業による現地採用面接。電気工学を専攻した男子学生は緊張した面持ちで金属熱処理加工を手掛ける東研サーモテック(大阪市東住吉区)の面接者と対峙(たいじ)していた。
「日本と韓国の違いで感じることは」との問いかけに「韓国では財閥への依存度が高く、国内総生産(GDP)の7割以上を占めている。しかし日本の場合は大企業でなくても技術力に優れ、グローバルで高く評価されている会社がある。だから日本での就職を希望している」
やや、韓国語なまりの日本語で答えると、面接者は納得したように大きくうなずいた。
この現地採用面接を主催したのは人材関連事業を手掛けるネオキャリア(東京都新宿区)。同社は日本の労働人口減少による採用難を解消しようと平成23年からアジアに進出。これまでに日本語が話せる中国、台湾、韓国、ベトナムといった現地の新卒大学生を中心に累計2000人を400社に紹介している。
とくに韓国については現地の人材会社と提携して、ソウルに日本就職学校を設置。100人が在籍して日本語やビジネスマナーなどの講座を受講している。同校では毎月、日本企業が出向いての採用面接会を開いている。
他の国に比べて韓国人採用の利点をクロスボーダー事業部の中村剛事業部長は「韓国語は文法がほぼ同じ言語のため、日本語の上達が速い。生活習慣も似ていて来日後もなじみやすく、企業から高く評価されている」と話す。
人手不足に悩まされている日本だが、対照的に韓国では就職難となっている。日本の総務省によると30年9月の有効求人倍率は1・64で、昭和40年代の高度成長期以来44年8カ月ぶりの最高値だった。一方で韓国雇用労働部が発表した2018年9月の求人倍率は0・60で日本の半分以下にすぎない。
■韓国の大卒就職率は7割未満
韓国では景気低迷が続いている。政府が打ち出した最低賃金の引き上げによって、人件費負担に耐えられなくなった中小事業者を中心とした雇い止めが増加し、雇用状況が悪化したことも要因とされる。大卒就職率をみても日本が98・0%でほぼ全員が何らかの職を得られるのに対し、韓国では7割に満たない。