昨年日本を訪れた訪日外国人は前年に比べて8・7%増の3119万人で過去最多。イスラム教徒が多いマレーシアやインドネシアからの訪日客も増えており、お好み焼き店を全国に展開する千房ホールディングス(大阪市浪速区)が今月、ムスリム(イスラム教徒)向けのお好み焼き店を開く。イスラム教の戒律に従った、豚肉を使わないお好み焼きを提供。訪日客の消費が関西経済の牽引(けんいん)役となる中、飲食店を中心にムスリム市場を取り込む動きが広まっている。(安田奈緒美)
「ムスリムの皆さんにも、大阪のソウルフードのお好み焼きを楽しんでもらいたい」
今月17日、訪日外国人の人気観光地となっている大阪・道頓堀にムスリム向け店舗を開く千房の中井貫二社長は話す。道頓堀川に面する自社ビル店舗の1フロアを改装し、席数約20席のムスリム向けにする。
イスラム教徒の戒律に従い、豚肉を提供しない。豚肉の代わりに牛肉や海鮮、野菜を使ったお好み焼きや鍋料理をメニューに並べるほか、ソースなどの調味料もアルコールを含まないものを用意。調理器具も別のフロアと一緒にしないなど細心の配慮をする。また、食事時間と礼拝の時間が重なったときに備えて、祈祷(きとう)室も設け、接客のアルバイトにもムスリムの留学生3人を雇う。
道頓堀の千房ビルの来客者は現在、8割ほどが訪日客になっているという。中国や韓国からの客が多いが、予約の電話で「豚肉抜きのお好み焼きはできますか」などの問い合わせも増えており、中井社長は「食のおもてなしも多様化しなければならない」と話す。
東南アジアは経済成長が著しく、イスラム教徒の多いマレーシアやインドネシアからの訪日観光客が増えている。日本政府観光局によると、昨年1~11月にはマレーシアから40万700人(前年同期比6・9%増)、インドネシアからは34万2900人(同14・3%)が日本を訪れた。