靖国神社が前宮司の手記に見解 「人々の祈りの中に『みたま』は存在」

終戦の日の靖国神社=昨年8月15日午後、東京・九段北(酒巻俊介撮影)
終戦の日の靖国神社=昨年8月15日午後、東京・九段北(酒巻俊介撮影)

 靖国神社は1日発行の社報「靖国」で、「文芸春秋」昨年12月号に掲載された小堀邦夫前宮司の手記「靖国神社は危機にある」の内容に対する見解を発表した。

 手記で小堀氏は、戦没者がたたらないよう靖国神社は祭祀(さいし)を続けてきた-との認識を示したが、見解は「靖国神社の使命は、ご祭神などの崇高な事績を後世に伝え、祭祀を厳粛に行い続けることにより日本のさらなる平和と発展に寄与することにあります」とし、「『みたま』のたたりを恐れ、鎮めることを目的とした神社ではありません」と否定した。

 小堀氏は、天皇陛下が靖国神社を参拝せず戦地への慰霊の旅を続けられていることについて「かつての戦地には、遺骨はあっても靖国神社の神霊(みたま)はそこにもうおられないと考えます」「神霊が陛下といっしょに移動することはありえないと思われます」と述べていた。

 これに対し見解は「公共性を有する神社や慰霊碑だけでなく、神棚や墓所・仏壇、さらには亡くなられた方々それぞれの縁の場所においても、人々の祈りの中に『みたま』は存在すると考えます」と、戦地にも戦没者の霊はいるとの認識を示した。

 靖国神社広報課は「教義や教典を持たない神道については信仰上の神霊観念にさまざまな考え方があるが、靖国神社としての見解を示した」としている。

 小堀氏は昨年、内部の研究会での「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ」「今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ」といった発言が週刊誌に報じられ、10月末で宮司を退任していた。

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