「公明正大に業務進めてきた」 ゴーン容疑者の意見陳述書全文

 そこで、私は、日産に入ってしばらくした平成14年以降、為替スワップ契約を締結していました。現在私にかけられている容疑では、2つ為替スワップ契約が問題となっています。一つは、18年に締結したもので、当時日産の株価は約1500円で、円・ドルの為替レートは約118円でした。もう一つは19年に締結したもので、当時日産の株価は約1400円で、円・ドルの為替レートは約114円でした。

 ところが、20年(2008年)から21年(09年)にかけての金融危機により、日産の株価は20年10月に400円、21年2月に250円にまで急落し(ピーク時に比べ80%超の下落)、円・ドルの為替レートは80円以下にまでドルが下がりました。これは誰も想像しなかった最悪の事態でした。銀行業界全体の仕組みが機能しなくなり、私が為替スワップ契約を締結していた銀行は、契約上必要となる金額の担保を直ちに差し入れるように要求してきましたが、私自身ではその銀行の要求に応えることができませんでした。

 それで、私は2つの厳しい選択肢を迫られたのです。

 (1)日産を退任して、退職慰労金を受領して、これを銀行に担保として差し入れるということです。しかし、私には日産への道義的な責任があり、この重大な局面で退任することはできませんでした。船長は、嵐の最中に船から逃げ出すようなことはできないのです。

 (2)私が他の知人などから担保を用意するまでの間、日産に金銭的な損失を負わせない限りにおいて、一時的に担保を提供してもらうように要請することです。

 結局、私は第2の選択肢を選びました。そして、しばらくして、上記の2つの為替スワップ契約の主体を再び私に戻しましたが、この間、日産に一切損害を与えておりません。

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