世界遺産「日光の社寺」 生きた伝統残せるか

「平成の大修理」が終わり、極彩色に輝く日光東照宮の陽明門=日光市山内
「平成の大修理」が終わり、極彩色に輝く日光東照宮の陽明門=日光市山内

 「平成の大修理」を終えた日光東照宮(日光市山内)の国宝・陽明門は、金箔(きんぱく)で縁取られた飾り金具や純白の柱が極彩色を放ち、平日でも写真撮影する観光客でにぎわっている。

 東照宮と日光山輪王寺、日光二荒山神社の2社1寺の建築物群と周辺の景観で構成される「日光の社寺」が世界遺産に登録されたのは平成11年12月。その後、観光客数はうなぎ上りと思われがちだが、実は前後で大きな変化はなく、「近年で最も多かったのはバブル全盛期」(日光市教育委員会文化財課)だったという。最近こそ外国人観光客が増えているものの、それよりも長い歴史と伝統に支えられてきた。

 ■「なるべくして登録」

 「日光は世界遺産になるべくしてなった。最近登録されている、複数の遺産を組み合わせてテーマ設定したものとは違う」。文化財保護に取り組む同課の鈴木泰浩副参事は日光の社寺そのものが持つ歴史的、芸術的な価値の大きさを強調する。確かに、世界遺産の登録基準を満たした建造物の作品性、景観、神社と寺の神仏習合が残る信仰性など登録に疑問の余地はない。登録後に問題となる観光客急増による地元の混乱も、もともと受け入れるだけの土壌があったといい、「世界遺産よりもっと古い時代からの礎がある。長い保全の歴史があり、地元の人が守る気持ちがあって残っている」(鈴木副参事)と江戸時代から続く伝統に言及する。

 だが、世界遺産登録のインパクトをしのぐ伝統があっても、その伝統を守り、次の時代に引き継ぐとなると大きな課題がある。人口減少による担い手の問題だ。

 ■担い手不足の課題

 世界遺産条約履行のための作業指針で、普遍的価値の評価基準には、「生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある」と書かれている。ここで評価された「生きた」伝統には、祭りなどの宗教行事も含まれており、「観光客が増えることなどでビジネス面は補填(ほてん)することができるが、祭事で人を集めることは難しくなった」(鈴木副参事)と黄色信号がともっている。

会員限定記事会員サービス詳細