亡き人思い、手紙投函 黄泉の国との境にポスト 松江

 愛する人に思いよ届け-。古事記で現世と死者の国の境として描かれる「黄泉比良坂(よもつひらさか)」とされる松江市東出雲町揖屋に、亡くなった人への手紙を投函(とうかん)できるポスト「天国(黄泉(よみ)の国)への手紙」が設置され、訪れる人が絶えない。近くに住む発案者の森山建二さん(71)は「残された人たちの心を癒やすことができれば」と話している。

 「あなたを思わない日はありません」「恋しくて恋しくて」…。投函された手紙には故人をしのぶ気持ちがつづられていた。うっそうと茂った木々の中に、手作りの木製ポストがぽつんと立ち、横には便箋とペンが置かれている。平成29年4月の設置から30年11月末までに2千通以上の手紙が集まった。毎年6月にはポストの前で、故人に届くよう願いを込め、手紙を火にくべるたき上げが行われている。

 黄泉比良坂は、イザナギが死んだ妻イザナミに会うため黄泉の国を訪れたが変わり果てた姿に驚いて逃げ出し、現世との境を巨大な岩でふさいだ場所とされる。22年公開の映画「瞬 またたき」で主演の北川景子さんが死んだ恋人に再会したいと願うシーンで登場し、訪問者が増えた。

 当時、タクシー運転手をしていた森山さんは映画を見て、約20年前にも、黄泉比良坂まで乗せた夫婦がじっとたたずんでいたのを思い出し、何かできないかとポストの設置を発案。28年に準備を始め、森山さんが会長を務めていた「東出雲ライオンズクラブ」と黄泉比良坂を管理する「黄泉比良坂神蹟保存会」が協力してポストができた。

 松江市の主婦、角静代さん(79)は30年6月、母親の25回忌を機に「お母さんの年齢に近くなり、育ててくれた苦労がひしひしと感じられるようになりました」としたためた手紙を投函した。たき上げにも参加し「走馬灯のように思い出がよみがえった。母への感謝を天国に届けられて良かった」と話している。

 手紙は郵送でも受け付けている。あて先は、郵便番号699-0109、松江市東出雲町錦浜583の18、東出雲ライオンズクラブ「天国への手紙」。

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