貯水槽は10年ほど使われた後、完全にうち捨てられたのか-。失望感を抱きながら周辺で聞き込みを続けていくと、別の住民が意外な話を教えてくれた。
「日本が整備した飲み水は今でも多くの人が使ってるよ」
外出先から自家用車で戻ってきた40~50代の村民5人の話を総合するとこうだ。現地では確かに新しい貯水池が整備され、日本が設置した導水パイプ網を撤去したものの、その貯水槽は残され、一部住民はゴム製パイプを整備して現在もその水を使っているという。日本への感情を訪ねると、「もちろんいいよ」と女性が笑顔をみせた。
近くで家族7人と暮らす70代の陳さんの自宅前には、日本の貯水槽から水を引いているという水道があった。陳さんは蛇口をひねってみせながら言った。「自然の水だからおいしい。貯水槽ができたときはうれしかった」
周辺には瓦ぶき屋根の家屋が並ぶ。さほど粗末にはみえないが、各住居には水道が引かれておらず、現在も外でバケツやタライに水をくんで家事に使っているという。隣家の入り口では若い女性が日本の水を使って洗髪していた。