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■成長を鈍らす大量の人手不足。投資も人材も足りない
新時代の経済を生き抜く取り組みは加速する。人工知能(AI)は、生産性向上や潜在成長率を押し上げる切り札とみなされている。この分野で立ち遅れた日本では、高齢化と労働力不足に陥る現場を救うツールとして、AIへの期待は大きい。遅れを優位性につなげられるか。それとも世界に取り残されるのか。
「50歳以上の職人の姿ばかりが目立つようになった」。大手ゼネコンの建設現場の担当者は嘆息する。建設業界では高齢化が急速に進み、このままでは現場を支えきれなくなる懸念が強い。日本建設業連合会(日建連)によると、働き手の約3分の1が55歳以上で、10~20代の占める割合は約1割にとどまる。日建連では、平成37年には128万人の人手不足が発生すると推計している。
「5年、10年後を見据えて早く手を打っていかなければ大変なことになる」。関係者は一様に、焦燥感を募らせる。鍵を握るのが、AIやモノのインターネット(IoT)を活用した現場の生産性向上だ。
昨年10月、国内最大の家電・IT見本市「シーテックジャパン」で関心を集めたのは、建設機械大手コマツの展示だった。会場の幕張メッセ(千葉市美浜区)では、約8キロ離れた実験場のショベルカーを来場者が遠隔操縦する体験会が催された。大画面には、同じ場所でAIを使った無人運転のショベルカーとダンプカーが連携し、周囲の障害物をセンサーで検知しながら土砂を運び出していく様子も映し出され、建設業界の関係者がどよめいた。
社長兼最高経営責任者(CEO)の大橋徹二は「人手不足や技術継承の課題を解決する。近い将来、知能を持つ建機が働く『無人の建設現場』も夢ではない」と力を込める。