中国のこうした動きは、民間投資で技術革新を続けてきたAI大国、米国にとって大きな脅威となったようだ。AIを活用してサイバー攻撃を他国に仕掛ける技術も存在し、安全保障上の課題が指摘されている。
18年5月。米ホワイトハウスで開催され、アマゾン、グーグルなど40社以上の幹部が参加したAIサミットで、政府に開発支援を求める声が相次いだ。
事実、米国でAI研究を主に支えるのは民間の力だ。マサチューセッツ工科大(MIT)で昨年10月、10億ドルを投じ、AI研究の大学を新たに創設することが発表された。10億ドルのうち、3億5千万ドルを負担したのは、著名な投資家、スティーブン・シュワルツマン氏だった。
開発競争「いつでも軍事転用」
経済誌、フォーブスの世界で最も影響力のある人物(2018年)の42位にランクインしているシュワルツマン氏だが、有数の大富豪だけではなく、トランプ大統領の諮問委員会の一つ、戦略政策フォーラムの会長を務めたことがあり、政権に近く経済人としても知られる。
「AIへの巨額投資は、米国が主導的な発言力を持つために必要だ」というシュワルツマン氏の発言は、トランプ政権の意向でもあるとみられる。
米政府は昨年、AI開発への規制を緩和する方針を発表。民間の開発支援策を検討する専門委員会を立ち上げるなど、官民挙げた取り組みに着手している。
宇宙開発分野も米中間の科学技術における覇権争いの舞台となっている。中国の宇宙局は昨年、宇宙実験施設「天宮(てんきゅう)2号」が、2019年7月に地球の大気圏に再突入する計画を発表した。22年前後に、独自の恒久的な宇宙ステーションの打ち上げへ向けて、着々と準備する一環である。
これに対し、米トランプ政権は宇宙開発における米国の優位性を保つため、米政府として久しぶりに宇宙に目を向けるようになった。昨年に発表した2019会計年度の予算案で、航空宇宙局(NASA)の予算を2018会計年度から約3億7000万ドル増額させた。そのうち、民間企業による月探査への支援予算も盛り込まれている。