米海兵隊が駐留するオーストラリア北部ダーウィンの港湾管理権が2015年10月、中国企業「嵐橋集団(ランドブリッジ)」に渡ってから3年が過ぎた。港の99年間貸与契約には、アジア太平洋重視を打ち出したオバマ米大統領(当時)が不快感を表明し、豪州政府が中国の影響力排除へとかじを切る要因の一つとなった。しかし、豪州首都から約3000キロ離れた現地では中国の投資を歓迎する空気が強く、中央との温度差を感じさせた。(ダーウィン 田中靖人)
日本の約3・5倍の面積に人口わずか約25万人の北部準州。州都ダーウィンはそのうち12万人が住む港町だ。第二次大戦前から海軍基地が置かれ、旧日本軍が開戦直後から爆撃を繰り返した戦略的要衝である。
海沿いの市中心部から車に乗ると、軍民共用の国際空港まで約5キロ、米海兵隊の地上部隊が乾期の半年間に配備される豪陸軍基地までは15キロで、わずか20分で基地のゲートに着いた。
海兵隊の駐留は昨年9月で終了していたが、12月上旬には米空軍のB52戦略爆撃機2機が飛来した。この地はまぎれもなく米軍の対中抑止の一翼を担っている。
だが、市中心部は空き店舗が目立ち、人影はまばらだ。複数の新しい高層住宅は、昨年夏に生産を始めた天然ガス液化工場の建設関係者を見込んだもので、「今は空室が多い」(地元主婦)という。
中国語の看板が目につく最大都市シドニーと異なり中国マネーをうかがわせるものはない。それだけに港湾施設前の「嵐橋集団」の文字が目を引いた。
「ダーウィンには海外からの投資案件が多数あり、当社はその一つにすぎない」
嵐橋集団の豪州責任者、マイク・ヒューズ副総裁はこう強調した。同社は15年、港湾を99年間賃貸する契約を5億600万豪ドル(約409億円)で交わし、全額を前払いした。それまで2年間に港湾が得た利益の25倍を超える高額だった。同社はさらに、25年間で2億豪ドル(約160億円)を投資することも約束した。