生々しい美人画、リアルな幽霊…京絵師・祇園井特の再評価を

生々しい美人画、リアルな幽霊…京絵師・祇園井特の再評価を
生々しい美人画、リアルな幽霊…京絵師・祇園井特の再評価を
その他の写真を見る (1/2枚)

 芸妓(げいぎ)や遊女のさりげないしぐさを写実的に描いた美人画のほか、生々しい幽霊画や人体解剖の記録画にも取り組んだ江戸時代の異色の絵師、祇園井特(せいとく)を再評価しようと、井特ゆかりの井筒八ッ橋本舗祇園本店(京都市東山区)で講演会が開かれた。

 井特は、円山応挙や伊藤若冲などと同世代の18世紀京都画壇の絵師で、祇園にあった茶店、井筒屋の主人、特右衛門の雅号と伝えられている。ただ、記録は少なく謎も多い。

 その作品は、円山派など伝統的な日本画の影響を受けながらも、女性の姿も美化することなくありのままに描く独特の画風で知られる。

 一方、機械仕掛けの等身大春画で話題を集めたり、写実的な人体解剖図に取り組んだりしたこともあってか、絵師としては異端視され、厳しい評価も少なくないという。

 井筒八ッ橋本舗は、井筒屋に料理を提供する仕出し店として発足したのが始まりで、ゆかりのある井特を芸術家として改めて評価してほしいとの思いから講演会を企画した。

 嵯峨嵐山文華館(同市右京区)の岡田秀之学芸課長は、文献に残された井特の「悪評」にも触れながら、「一人ひとりの個性あふれる表情を愛情を込めて描いた絵が数多くある」と紹介した。

 その後、京都ジャーナリズム歴史文化研究所の丘眞奈美代表や、井筒八ッ橋の津田佐兵衞オーナーを交えた座談会が開かれた。津田氏は井特が取り組んだ人体解剖図について「鴨川に流された大量の遺体を描いたのが始まりではないか」と推測し、「いろいろ見方はあるだろうが、一人の芸術家として井特を認めていただければ」と述べた。

 津田家には、井筒屋から受け継いだ井特作品とみられる子連れの芸妓の絵や、幽霊画、春画が大量に残されているといい、今後、整理し公開していくことも検討している。

 井筒八ッ橋本舗祇園本店5階のぎをん思いで博物館ホールでは、26日まで特別コーナーを設け、京都市上京区の老舗料理店「西陣魚新」所蔵の井特作品などを展示している。問い合わせは同博物館(075・541・2000)。

会員限定記事会員サービス詳細