不来方高バレーボール部員の死 暴力、パワハラ…問われた1年 岩手

 日大アメリカンフットボール部の危険タックル問題、体操女子選手による「パワーハラスメント」告発…。スポーツ現場の指導のあり方が問われる1年だった。岩手県でもある運動部員が死を選んだ。顧問の指導と自殺に因果関係があったのか、なかったのか。検証は今後設置される第三者委員会の審議に委ねられる。遺族は「何があったか明らかにして」と訴える。(土樋靖人)

 7月7日、七夕の日。あいにくの雨。盛岡市内の斎場で少年の葬儀が営まれた。

 少年の名は新谷翼さん。17歳、県立不来方(こずかた)高の3年生。男子バレーボール部員だった。身長は高校2年で、すでに196センチ。左利きのミドルブロッカーで、関東の有名私大から誘いも受けていた。

 翼さんは7月3日早朝、亡くなっているのを母親(48)が見つけた。

 葬儀翌日、机の引き出しの奥から遺書が見つかった。部活の悩みがつづられていた。

 「ミスをしたら一番怒られ、必要ないと、使えないと言われました。高校でこれなら大学で生きていけるはずがないです」

 県教育委員会は不来方高の男子バレーボール部員らから聞き取りを実施した。翼さんが男性顧問(41)から「そんなんだからいつまでも小学生だ。幼稚園児だ」「脳みそ入っていないのか」という言葉を浴びていたという証言があった。

 顧問は前任校の県立盛岡第一高の元男性部員(27)と両親から訴えを起こされている。訴状などによると、部活で暴言や暴行を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとしている。

 昨年11月の盛岡地裁の1審判決は「顧問の男性教諭の指導は社会的相当性を欠いていた」として、県に20万円の支払いを命じた。しかし、教諭が日常的に暴力や暴言を繰り返していたとの主張は認められず、元部員側は仙台高裁に控訴。判決は来年2月1日に言い渡される。

 翼さんの父親の聡さん(51)は10月13日、第三者委の早期設置を求め県教委に赴く前、「うちの子はそんなにひ弱ではない」と語った。その夜の会見でも「(顧問の)行き過ぎた言動でこうなったと思う」と胸中を明かした。

 顧問らを相手取り訴訟を起こした盛岡第一高の元部員の父親(62)は言う。

 「昨年の1審判決が出た時点で(県教委や学校が)もう少しまともに対応していれば、失わずに済んだ命だったはずだ」

 遺族は11月、顧問が翼さんの顔などにボールを投げつけたとして、暴行罪で紫波署に告訴した。「顧問のパワーハラスメントが翼の心を折って自殺に追い込んだ」とのコメントを出した。

 遺族や代理人弁護士は、平成25年に日本体育協会(現日本スポーツ協会)などが出した「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」が周知されていたかも問題提起した。宣言は「言葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧」も暴力行為だとしている。

 翼さんの自殺は有識者で構成される第三者委で調査、検証される。高橋嘉行教育長は「公正、公平な審議を客観的に行っていただく」とする。自殺の真相に迫ることはもちろん、問われているのは暴言も含めた暴力行為の根絶に対する姿勢だ。「あのとき、きちんと対応していれば」。そんな声をもう、遺族に語らせるべきではない。

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