【ソウル=名村隆寛】韓国最高裁が新日鉄住金に対し、いわゆる徴用工として労働を強制されたと主張する韓国人男性らへの損害賠償を命じた判決で、原告側が新日鉄住金に通告していた賠償方法などに関する協議への「回答」期限が24日午後5時(日本時間同)に過ぎた。
原告側弁護団によると、新日鉄住金側からの回答はなかった。今週中にも資産差し押さえの手続きが行われる可能性が出てきた。
原告側は今月4日、東京の新日鉄住金本社を訪れ、協議を申し入れる要請書を手渡した。さらに同日の記者会見で、24日午後5時までに回答がない場合、韓国内にある同社資産の差し押さえ手続きを、年内に始める方針だと表明していた。
原告側弁護士によると、新日鉄住金が韓国内に持つ資産には、同社と韓国鉄鋼大手ポスコの合弁会社の株式(約11億円相当)や3千件以上の知的財産権などがある。一方で原告側は「差し押さえ手続きと、資産現金化の手続きは別」としており、差し押さえ後も協議での解決を優先する考えだ。
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日本政府は、原告弁護人が韓国国内で資産の差し押さえ手続きに入っても、韓国側の公権力が実際に執行するまでは、表立った対抗措置を取らない方針だ。韓国政府が李洛淵(イ・ナギョン)首相を中心に対応策の検討を続けていることをむげにはできない事情がある。
政府は、一連の確定判決を「日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆す」と批判。国際司法裁判所(ICJ)への提訴を含む対抗措置の準備も進める。
外務省幹部は「差し押さえを行うのは韓国の公権力だ。ここが動いた場合には、われわれも動かざるを得ない」としている。(原川貴郎)