ゴーン容疑者「決議あればいいんだね」 損失付け替え、銀行難色を押し切る

●予期せぬ提案

 東京・東銀座にあった旧日産自動車本社で、新生銀行の担当者ら3人と向き合ったゴーン容疑者はこう語りかけた。

 「それじゃあ、この契約の当事者を日産との契約に変えたらどうか」

 評価損を含む全ての権利を会社に付け替えるという予期せぬ提案に、担当者は耳を疑ったという。

 担当者はすぐに「取引先が日産であれば追加担保は求めませんが、取締役会の決議が必要ですよ。でも常識的に考えて決議されませんよ」と強く難色を示した。

 ゴーン容疑者は「君、何を言っているんだ」と意に介さず、「なるほど、取締役会の決議があればいいんだね。分かった。法務部長、秘書室長をよこすから打ち合わせをしてくれ」と手続きを進めるよう促したという。

 その後、新生銀行の担当者は日産の法務部長と秘書室長と面会。「本当にいいんですか」と担当者が確認したところ、法務部長らは「取締役会で決議したので日産の契約に付け替えてください」「法的手続きは踏みました」と応じたという。同月、契約の当事者がゴーン容疑者の資産管理会社から日産へ変更された。

●監視委が問題視

 翌年の21年1月、証券取引等監視委員会の検査官が新生銀行を訪れた。監視委が問題視したのは、日産幹部が「問題ない」と語っていた取締役会での決議内容だった。

 取締役会の議事録に書かれていたのは「新たな為替取引の担当者選任について」という趣旨の案件名と、「全員承認した」との簡素な決議内容。取引内容の説明や他の取締役からの意見などは一切記載されていなかったという。

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