終了30秒前「行けー」 高橋侑希、妻に感謝の3連覇

山口海輝を攻める高橋侑希(右)=22日午後、東京都世田谷区・駒沢体育館(納冨康撮影)
山口海輝を攻める高橋侑希(右)=22日午後、東京都世田谷区・駒沢体育館(納冨康撮影)

 土壇場で力をくれたのは、妻の声援だった。レスリング全日本選手権の男子フリースタイル57キロ級決勝は試合終了まで30秒を切り、4-4。このまま終われば、昨年の世界王者でもある高橋侑希(ALSOK)は試合の内容差で山口海輝(日体大)に負ける状況だった。

 「行けー」。客席のどこかにいる妻の声が聞こえた。「行くしかねえ」と相手の頭を腕で抑え込んだ。後ずさりした相手は審判に消極的と判断されて1点が転がり込み、これが決勝点になった。

 同級生の妻と入籍したのは、3位に終わったジャカルタ・アジア大会直後の8月末。日体大でレスリングに打ち込んだ経験者だ。毎日、栄養を考慮した食事を作ってくれるから、試合前の減量も難なく乗り越えた。練習で納得がいかずに落ち込んで帰宅しても、「何、その顔」と叱ってくれる。「妻の支えがなければここまで来られなかった」。試合後、そう言って声を詰まらせた。

 いま、25歳。レスラーとしては脂が乗る盛りだが、今大会の準決勝は高校生に接戦に持ち込まれた。「若手が伸びてきているけど、『負けないぞ』という気持ち。どうしても五輪に出たい」

 リオデジャネイロ五輪は代表の座をつかみ損ねた。妻は最後、けがで現役続行を断念せざるを得なかった。夢の舞台を、もう逃すわけにはいかない。東京五輪への出場は、家族の願いでもあるから。(岡野祐己)

会員限定記事会員サービス詳細