回顧2018

演劇/舞踊 海外視野に「日本発」活況 「2.5次元」舞台に新たな観客層

 ◆老舗劇団底力見せ

 スター頼みの舞台全盛の中、老舗劇団が底力を発揮した。演劇集団円「藍ノ色、沁ミル指ニ」と、青年座「残り火」は、それぞれ内藤裕子と瀬戸山美咲という若手劇作家の力作を、総合力で一層輝かせた。青年団「日本文学盛衰史」も良い作品だった。

 歌舞伎は松本白鸚(はくおう)、幸四郎、市川染五郎の高麗屋(こうらいや)三代が同時襲名。中村吉右衛門(きちえもん)主演「俊寛」は、平成歌舞伎の名舞台だった。

 ミュージカルは「メリー・ポピンズ」、三谷幸喜の「日本の歴史」が光った。

 ◆浅利慶太さん死去

 劇団四季の創立者で、演出家の浅利慶太さんが7月、85歳で死去した。日本初のロングラン公演を成功させ、日本にミュージカルを定着させた最大の功労者。最後の演出作は、日中戦争を描く「ミュージカル李香蘭」で、昭和の記憶を伝える遺言といえよう。文楽の人間国宝、竹本住太夫も去った。

 ■ダンス界も国際化進む

 舞踊界でも、日本ダンスの海外発信が目立った。勅使川原三郎らに続く世代が、海外で腰を据え創作・表現活動を行い、発信力を増している。

 川口隆夫がパリなど世界各地で、舞踏の歩みを提示する「大野一雄について」を上演したほか、小尻健太や湯浅永麻は、欧州でのダンサー経験を日本にも還元。北村明子はアジアでの綿密な調査を生かし、現地の伝統的表現を取り入れた作品を発表。舞踊評論家の岡見さえさんは「外国語に堪能で深い次元の国際制作を行い、日本の独自性を発信できるダンサーが増えた」と評価する。

 国内では、横浜の「ダンス・ダンス・ダンス・アット・横浜」(DDD)、東京の「ダンス・ニュー・エア」など、ダンスの国際的祭典が続いた。特にDDDでは日仏共同制作で、日本のダンスをフランスに紹介した功績も大きい。

 東京で舞踊公演をよく行った青山劇場や五反田ゆうぽうとの閉鎖後、舞踊界の劇場不足が深刻だ。民間バレエ団は公共ホールの活用でしのぐ。ぴあ総研の調べでも平成29年、会場不足もあり舞踊公演回数は前年比9・6%減の2548回(推計)で動員数も減少した。

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