演劇界は、1年半後に東京五輪・パラリンピックを控え、海外発信が顕在化した1年だった。また、「2.5次元ミュージカル」の急成長が公演数全体を押し上げ、舞台の多様化を印象づけた。(飯塚友子、三宅令)
◇
これまでは海外ヒット作の輸入超過だったミュージカル界で、「日本発」を目指す動きが目立った。
ホリプロ企画制作の「生きる」は、海外上演も見据え、黒澤明監督の同名映画を初ミュージカル化。余命を知った役人が、公園造営に命を燃やす物語を宮本亜門演出、グラミー賞受賞作曲家のジェイソン・ハウランドの音楽で創作、新たな魅力を放った。
宝塚歌劇団も3回目の台湾公演で、現地の人形劇を初ミュージカル化した「東離劍遊紀」を成功させた。同団は近年、台湾や香港の映画館で公演中継をするライブビューイングに力を入れ、訪日客誘致を含めアジア市場を視野に入れる。
劇団四季は昨年、オリジナル作品の上演権を海外で活用するライセンス事業を開始。中国で11月から「魔法をすてたマジョリン」が現地俳優により演じられ、来年6月まで20都市100公演が予定されている。
いずれも海外上演が文化交流だった時代を経て、商業的に発信する時代が到来したといえるだろう。
◆都心の劇場足りず
イベントやライブと演劇の境界が曖昧化し、作品が多様化する中、急成長するのが2次元の漫画やアニメ、ゲームを3次元の舞台で再現する2・5次元ミュージカル。声優やコスプレイヤーが舞台進出し、新たな観客層を開拓している。
ぴあ総研によると、平成29年の2・5次元ミュージカルの動員数(推計)は、前年比48・1%増の223万人と急成長。30年も新作歌舞伎「NARUTO-ナルト-」や、宝塚歌劇団「ポーの一族」など大劇場公演が続き、「増加傾向は続いている」(ぴあ総研の笹井裕子所長)という。
新ジャンルの舞台急増で公演数が増加する中、課題は「都心の劇場不足」(笹井所長)。訪日客向けに統一した英語チケット情報・販売サイト構築も急務だ。