「雪ばなな」 豪雪地帯の山形県戸沢村でバナナ栽培

 豪雪地帯の雪深い山形県戸沢村で、熱帯地方の果物、バナナが温泉熱を利用して栽培されている。JAおいしいもがみ(安食賢一組合長)が昨年12月に栽培を開始したバナナが実をつけ、19日、「雪ばなな」としてお披露目された。メードイン山形産の無農薬栽培を売りに来年中に県内外に出荷される。

 豪雪地帯に南国産のバナナ栽培を思い立ったのは、JAおいしいもがみとコメ販売で取引のあるコメ卸業「神明」(神戸市)の関連会社「東果大阪」(大阪市)が岡山県で温室栽培でバナナ栽培を手がけていることから「環境を変えれば雪国山形県でもバナナが栽培できる」とJAおいしいもがみの阿部直人副組合長が「戸沢村でもバナナをつくり地域活性化に役立てよう」と発案、特産品づくりとして開始した。

 リンゴのような風味とほどよい甘さが特徴の、耐寒性の高い沖縄県産のアップルバナナの苗など38株を購入し昨年12月に定植。続いてアイスクリーム、島など他品種も植え、ハウス内には88本が育っている。

 バナナの成熟には約8カ月の積算温度が必要だが、山形県では外気温が零度以下になることが多いため、戸沢村の温浴施設「いきいきぽんぽ館」の敷地内に高さ約7メートルのビニールハウスを建て、中にもう1枚のビニールで覆い2重のハウス内で育て始めた。広さ約560平方メートルの室内に温泉水を引き込み、ボイラーを併用し室温を20度以下、15度以下にならないよう設定し栽培している。

 阿部副組合長によれば、雪ばななは、酸味もありほどよい甘さが特徴で、雪ばななの名は、吉村美栄子知事にバナナ栽培を説明した際、「うーん、雪ばなな、ではいかがでしょう」と言われたことから知事の許可を得て命名したという。

 国内では、輸入バナナが年間約100万トン流通しており、輸入元であるフィリピン産バナナに新パナマ病が流行し輸入量が減少するなか、JAおいしいもがみでは、無農薬の国内産バナナという売りで売り出していきたいという。

 阿部副組合長は「将来的には、バナナのシェイクやケーキなど加工食品もつくり、この温浴施設を含めた地域活性化につなげていきたい」とした。

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