新聞に喝!

なぜ中国や北の政権を「極左」と呼ばぬ 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

 10月28日、南米ブラジルの大統領選挙で下院議員のジャイル・ボルソナロ氏が当選した。30日の新聞各紙が報じているが、論調に相違がみられる。それを端的に示しているのは、同氏とその所属政党を「極右」とするか、「右派」とするかの表現である。

 主要6紙のうち、極右とするのが朝日・毎日・東京それに読売で、右派とするのが産経と日経である。これは単に用語の違いにとどまらず、同大統領に対する見方そのものが反映されていると言ってよい。

 例えば、産経の社説「主張」では、「ボルソナロ氏は『極右』とも称されるが、どこがそうなのか。まずは、その人物、考え方を冷静に見極める必要がある」とある。

 日経の社説は、過去の過激発言から心配する声はあるが、「同氏が選ばれた背景には長引く経済の低迷と積年の政治腐敗がある。経済と政治の両面でブラジルを立て直すため、次期大統領が成長重視の構造改革とガバナンス(統治)強化に注力することを期待したい」としている。

 一方、「極右」側の各紙は今後を危惧する。毎日の社説のタイトルは「ブラジルに極右大統領 『大衆迎合』の不安な旋風」であり、「ボルソナロ氏に関しては気がかりな点が多い」と言う。

 朝日には社説がないが、当選記事のリードには「極右ポピュリストの大統領が南米でも誕生した。(中略)『自国第一』や軍事独裁政権を賛美する過激な発言で知られ、異名は『ブラジルのトランプ』」とある。

 この「ブラジルのトランプ」という言い方は、各紙に決まったように出てくるが、朝日の表現のポイントは、「極右ポピュリストの大統領が南米でも誕生」と言っているところである。「異名」とするが、比喩的な表現でない。「でも」ということは、ドナルド・トランプ米大統領は極右だということになるが、本当にそうなのか。

 右翼・左翼、右派・左派という分け方も、そう単純な問題ではないのに、「極右」と言う強い表現で断定するのは、トランプ大統領にもボルソナロ大統領にも、不適切ではないのか。

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