主張

中国の報復措置 「法の支配」共有できない

 中国はカナダの元外交官に続き、カナダ人事業家の身柄を拘束した。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)、孟晩舟容疑者の逮捕を受けた報復措置とみられる。

 こうした事態を受けてカナダのフリーランド外相は「法の支配に従う」と述べた。孟容疑者に関する審理は司法の判断に委ね、政府が介入すべきではないとの考え方だ。

 「法の支配」は、自由、民主主義、人権と並び共有すべき普遍的価値である。ただし中国に「法の支配」は存在しない。共通言語を持たない国との紛争を解決する難しさを、改めて思い知る。そしてこの重大なリスクは、あらゆる交渉につきまとう。

 「法の支配」とは一般に、統治する側も法に拘束されるという原理である。

 だが中国共産党は、2014年10月の中央委員会第4回総会(4中総会)で「法に基づく統治(法治)の強化」を採択し、大会後のコミュニケは「党の指導が法治の最も根源的な保証となる」と規定した。党が法の上にある。党が法を支配するとの宣言である。

 それゆえ中国は、しばしば法を恣意(しい)的に行使する。カナダの元外交官や事業家の身柄拘束理由も、なかなか公表されない。

 記憶に新しいのは10年、沖縄・尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件だ。公務執行妨害の疑いで逮捕・送検された中国人船長を那覇地検は処分保留のまま、釈放した。

 那覇地検は「わが国国民への影響や今後の日中関係を考慮した」と釈放の理由を説明した。

 中国側は船長の逮捕を受けて日本の中堅ゼネコン社員ら4人の身柄を拘束し、これに慌てた当時の民主党政権が検察庁に釈放を迫ったものだった。

 この問題は、二重の意味で大きな禍根を残した。政府が政治・外交上の判断を検察に責任転嫁したことで生じた司法への不信と、中国に国内法の恣意的運用を人質に自国民を釈放させる、誤った成功体験を与えたことである。

 米中のハイテク覇権を絡めた貿易戦争は形態を変えた新たな冷戦にも例えられる。「法の支配」にしばられない中国は野望の達成に向けてなりふり構わぬ対抗措置を続けるだろう。そこでは日本も、いつ標的となるか分からない。

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