東北地方では生産の難しい南国産のレモンの収穫が13日、山形市南栄町で始まった。周囲に雪が残るなか、二重のビニールハウス内は無加温ながら20度ほどと暖かい。「今年は暖冬のおかげで早く実が育った」と、南国産くだものを生産する「ハンドレッドベリーズ」の石岡浩明代表(58)はほほ笑む。約1カ月早いレモンの収穫は年内いっぱい続く。
「山形レモン」と名付けられたレモンは、オレンジとレモンの交雑種で耐寒性に優れた八丈島産の菊池レモン(マイヤーレモン)。鉢植えながら樹高約1・7メートルまで育った5~6年樹に多いもので30個近くの実がなり、今年は500個以上収穫が見込めるという。
ガンで闘病する友人が、果物と野菜のミックスジュースの食事療法を続けていたことから、自宅に招いた際に無農薬でつくったリンゴとにんじん、レモンのミックスジュースを飲ませたら、「おいしい。僕は無農薬のリンゴを作るから、石岡さんは無農薬でレモンをつくって」と言われた。これがきっかけとなり、石岡代表は平成25年、雪国の山形ではめずらしいレモン栽培に挑戦した。
雪国山形で南国の果実であるレモンを栽培するには、耐寒性に優れたレモンの樹、それに加えたレモンの生育環境となるビニールハウスにもひと工夫が必要だった。山形県山辺町のイチゴ農家が二重のビニールハウスで無加温ながらイチゴ栽培しているのを見たのをきっかけに、「レモン栽培には、もう少し厚めのビニールを二重にしたハウスでいこう」と決断。だが、すぐに成果は出ず、25、26年と収穫はゼロ。だが27年には20個、28年は100個と徐々に成果を出してきた。
昨年は、山形大学東北創生研究所の協力で二重のビニールハウスにもう1枚、内側にビニールを増やして室温を上げ、約50個の山形レモンを収穫。今年はさらに増やそうと、隣接する大きなビニールハウスでレモン樹を約40本に増やし、大きいもので300グラムほどの山形レモンをならせた。