【話の肖像画】漫画家・水野英子(79)(4)全力を振り絞った「ファイヤー!」(1/2ページ) - 産経ニュース

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話の肖像画

漫画家・水野英子(79)(4)全力を振り絞った「ファイヤー!」

複製原画が並ぶ部屋でサインに応じる =10月21日、東京都豊島区のトキワ荘通りお休み処
複製原画が並ぶ部屋でサインに応じる =10月21日、東京都豊島区のトキワ荘通りお休み処

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〈昭和44(1969)年、「週刊セブンティーン」(集英社)でロック歌手を主人公にした連載「ファイヤー!」が始まる。音楽の表現を絵で試み、少女向け漫画で男性が主人公など極めてユニークな作品だった〉

編集部に「グループサウンズの話を書きたい」「少年が主人公だけどいい?」と話をして、オーケーをもらって。でもこんな話になるとは思わなかったのでは(笑)。

当時はロックの全盛期で、ピンク・フロイドやジミ・ヘンドリックスの音楽がガンガン鳴っていました。ビートルズはクラシック音楽を主に聴いていた私にはちょっと単純すぎたのですが、その後のプログレッシブ・ロックにはものすごくのめり込んだんですね。みんな反体制のメッセージで、今までの価値観が溶解し、新しい価値観が出てきた。私はすごく共感して、これを描かなければと思ったんです。

〈新しい価値観とは何だったのか〉

たとえば、長髪がはやったでしょう。なぜ男性は髪を長く伸ばしてはいけないのかということを、それまでは夢にも思わなかったと思う。今までの決まりをとにかく壊していく。なぜ自分たちがそれに縛られなくてはならないのか。生まれたままの姿になろう。ベトナム戦争が泥沼化して西洋思想の限界が分かり、キング牧師、マルコムXなどによる黒人運動も一気に出てきた。今まで抑えつけられていたものが全部力を増してきて、今までの体制を抑えつけたんです。それに感激したんですね。

描く前に欧米で取材旅行し、深夜のアンダーグラウンドでいろんな所に潜り込んでライブを聴いてきました。日本のグループサウンズが足元にも及ばないような力のある人たちが歌っていて、素晴らしかった。

〈主人公・アロンは無実の罪で感化院に入れられ、音楽に目覚めた後は、純粋さゆえに崩壊への道を進んでいく〉

連載が始まって、それまで1日20~30通来ていた投書がぴたっと止まりました。でも何がやりたいのかが分かってからの反響は、すさまじかった。とにかく全力を振り絞りましたね、あの作品は。これは絶対に今描かなければならない作品だと、今描かなければ意味がないと。

〈女性向け漫画誌でベッドシーンを描いたことでも話題になった〉