【北京=西見由章】中国の習近平国家主席は11月30日(日本時間12月1日未明)、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議で演説し、中国市場の一層の開放をアピールしつつ、米国を念頭に置いた従来の「保護主義」「一国主義」批判は封印した。米中首脳会談で貿易戦争の休戦にこぎつけたい中国側が、トランプ米大統領に一定の配慮をみせた格好だ。
中国外務省によると、習氏は演説で、知的財産権の保護や輸入の拡大方針を強調。中国の不公正な通商政策に対応できていないとして米国が求める世界貿易機関(WTO)改革をめぐり「改革は賛成だが独善的な決定はすべきでない」と牽制(けんせい)する一幕はあったものの、米国の通商政策をめぐっては「自由貿易とルールに基づく多国間貿易体制を擁護すべきだ」などの表現にとどめた。首脳会談を前にトランプ氏を刺激し、米中の対立構図が強まるのを避けたとみられる。
習氏は11月中旬にパプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)での関連会合では、米国を念頭に保護主義や一国主義への反対を各国に呼びかけ、同じ会場で中国の通商・安全保障政策を批判したペンス米副大統領と舌戦を展開。APEC首脳宣言の文言をめぐって米国と対立し、宣言が採択されない初の事態を招くなど両国の対立がエスカレートしたことへの反省が背景にあるとみられる。