話の肖像画

物理学者・江崎玲於奈(93)(5)科学技術こそ国の根幹

エサキダイオードを使ったソニー製ラジオを手に、妻の真佐子さんと =茨城県つくば市(佐藤徳昭撮影)
エサキダイオードを使ったソニー製ラジオを手に、妻の真佐子さんと =茨城県つくば市(佐藤徳昭撮影)

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〈米国から帰国後、大学で学ぶ意味を学長として若者に伝えてきた〉

学校へ行くということは、自分が何を得意とするかをよく見るということです。つまり持ち前の能力を最大限に発揮でき、ハッピーな人生を送れるシナリオを描く能力を身につけることが、大学に行く目的だと思うのです。福沢諭吉が言ったように、僕は自分の運命というものは、自分で切り開くものだと思っています。

〈知性は分別力と創造力に分けられるという〉

分別力というのは「聞く、読む、覚える」という受け身型で先生から学ぶのですけど、創造力というのは「疑う、考える、調べる」を基本とする自主学習によって養われます。僕はアメリカの学校には行っていませんけど、子供たちが行った学校なんかを見ますと、アメリカの方が自分たちで学ぶ機会が多いと感じる。先生がいろいろと親切に指導すると、もう駄目なんですよね。創造力は芽生えません。

僕は多分、日本で博士号を取ったらノーベル賞なんて絶対に取れていなかったと思います。だって、その先生の考えるようなものをするわけですから、そんなのはもう既に大体出来上がっています。

〈現在は生命科学を研究する横浜薬科大の学長を務める〉

将来、日本はバイオを重視しなくちゃいけない。日本ではノーベル賞の受賞は物理が私を含めて11人、化学は7人ですけど医学・生理学賞はこれより少ない。しかし、21世紀は生命科学の時代ですからね。日本は例えば自動車産業では世界に冠たるものがありますけど、製薬産業では目立ったものがありません。ですからもう少し日本全体として、生命体を研究する学問の振興を図るべきではないかと僕は思う。

〈日本の科学技術力の低下が指摘されている〉

防衛も経済もそうですが、あらゆる面で科学や技術の振興が国家の繁栄を支える屋台骨だということを、もう少し多くの人に認識してもらいたい。戦争の勝敗ももちろん、科学力や技術力によって決まった。

私が大学1年生のとき、東京大空襲の前ですが、(米軍爆撃機の)B29が単独でよく東京の空に飛んできた。爆弾を落とさないので、偵察に来ていたのだと思います。成層圏を飛ぶので日本の戦闘機は攻撃できず、非常に安定して上空を飛ぶ。それを見て「敵ながらあっぱれだな」と、高いテクノロジーに感動したのを覚えています。

つまり、科学や技術こそ社会の根幹で、これを発展させることが何よりも大事だと。戦争の勝ち負けも、その高さによって決まる。日本も当時は科学者や技術者を大量に生み出すことに努め、そういう人たちが戦後の復興で貢献したことが少なからずあったと思います。いろんな企業にとってプラスになったのではないでしょうか。(聞き手 小野晋史)

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