昭和39年物語

(9)村山実という男…「泣きの村山」怒りの猛抗議

 村山が切れた。脱兎のごとくマウンドを駆け下り「なぜ、いまのがボールなんだ!」と国友球審に詰め寄った。必死に抱きかかえる捕手戸梶。「しっかり見ろ! どこに目をつけてるんだ!」。この言葉に国友が「退場!」を宣告。さらに血相を変えて迫る村山。避けようと国友が伸ばした左手が村山の顎に当たった。

 「審判が選手を殴るとはどういうこっちゃ!」とベンチから藤本監督と青田ヘッドコーチが怒鳴りながら飛び出す。村山は泣いた。親友の山本哲に抱きかかえられ、泣きながら審判に訴えた。

 「わしらは命がけで投げとるんや。あんたらも命をかけて判定してくれ」

 試合は延長十回、3-2で阪神が勝った。

 「たった1球でもムラさんはいつも心を込めて投げていた。ただ、あの試合、オレがもっとしっかり投げてたら、あんな騒動は起らんかったんよ」。本間は申し訳なさそうに言った。

=敬称略 (田所龍一)